洋楽日和

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『Bennie And The Jets』Elton John 歌詞和訳|『ベニーとジェッツ』エルトン・ジョン

今回は、Elton John(エルトン・ジョン)の

  • ベニーとジェッツ(Bennie And The Jets)

の歌詞を和訳します。

ベニーとジェッツ」はこの曲に出てくる架空のロックンロールバンドの名前です。

作詞者のバーニー・トーピン曰く「オーウェル的」かつ「SFから飛び出してきた」ような女性のロックンローラーをイメージして書いたようです。

特徴的な

べべべ ベニーアンドジェッツ!

という吃りの表現は、エルトン・ジョンのアイディアで未来的なロボットを喚起させる演出だといいます。

意外と難解な歌詞なので、できるだけ丁寧に歌詞の解釈を行っていきます。

Elton John(エルトン・ジョン)とは?

Elton John(エルトン・ジョン)は、イギリスのミュージシャン、シンガーソングライター。

1969年にソロ・デビューし、翌年1970年に『僕の歌は君の歌」でヒットする。

作曲は自身によるものだが、作詞に関してはデビュー以降バーニー・トーピンが担当している。

70年代の全盛期を追えて、80年代後半から90年代前半にかけては楽物依存症やアルコールで苦しむ日々を送っていた。

が、依存症を乗り越えて90年代後半には映画『ライオン・キング』のサントラなど多くの仕事で成功している。

グラミー賞は5回受賞、34回ノミネーションされている。

ベニーとジェッツ(Bennie And The Jets)という曲

ベニーとジェッツ(Bennie And The Jets)は、1973年に発表されたエルトン・ジョンの楽曲。1974年にアメリカでシングルカットされ、全米1位を記録した。

1973年に発売されたアルバム「黄金のレンガ路」に収録されている。

作曲はエルトン・ジョン、作詞はバーニー・トーピンが務める。

ジョンはヒットしない曲と考えて、シングルカットを拒んでいたがラジオ局で頻繁に流されていたことがきっかけとなり、アメリカでのシングルヒットに成功した。

このヒットにジョンはショックを受けて、自分のどの曲がヒットするかほとんどわからないと主張している。


www.youtube.com

ベニーとジェッツ(Bennie And The Jets)の歌詞

Hey kids, shake it loose together
The spotlight's hitting something
That's been known to change the weather
We'll kill the fatted calf tonight, so stick around
You're gonna hear electric music
Solid walls of sound

Say, Candy and Ronnie, have you seen them yet?
Ooh, but they're so spaced out, B-B-B-Bennie and the Jets
Oh but they're weird and they're wonderful
Oh Bennie she's really keen
She's got electric boots, a mohair suit
You know I read it in a magazine, ohh-oh
B-B-B-Bennie and the Jets

Hey kids, plug into the faithless
Maybe they're blinded
But Bennie makes them ageless
We shall survive, let us take ourselves along
Where we fight our parents out in the streets
To find who's right and who's wrong

Oh Candy and Ronnie, have you seen them yet?
Oh but they're so spaced out, B-B-B-Bennie and the Jets
Oh they're so weird and they're wonderful
Oh Bennie she's really keen
She's got electric boots, a mohair suit
You know I read it in a magazine, ohh-oh
B-B-B-Bennie and the Jets

Oh Candy and Ronnie, have you seen them yet?
Oh but they're so spaced out, B-B-B-Bennie and the Jets
Oh but they're weird and they're wonderful
Oh Bennie she's really keen
She's got electric boots, a mohair suit
You know I read it in a magazine, ohh-oh
B-B-B-Bennie and the Jets

Bennie, Bennie and the Jets
Bennie, Bennie, Bennie, Bennie and the Jets
Bennie, Bennie, Bennie, Bennie, Bennie and the Jets

Bennie, Bennie, Bennie, Bennie and the Jets
Bennie, Bennie, Bennie, Bennie, Bennie, Bennie, Bennie, Bennie and the Jets
Jets, Jets
Bennie, Bennie, Bennie, Bennie, Bennie, Bennie, Bennie, Bennie, Bennie
Bennie, Bennie and the Jets

ベニーとジェッツ(Bennie And The Jets)の歌詞和訳

よう ガキども 一緒に踊ろうぜ

スポットライトが何か照らしてるな

ありゃ天気だって変えちまうって噂だぜ

俺たちは今夜 盛大に祝うのさ まさに”太った子牛を殺す”ってやつだな

だから その辺で待ってろよ

イカしたエレクトリック・ミュージックが聞こえてくる

完璧な"ウォール・オブ・サウンド"だ

なぁ キャンディーとロニー アイツらを見たことあるか?

まぁ 相当イッちまってるヤツらだけどさ ベ ベ ベ ベニーとジェッツ!

すげぇ変わってるけど 最高でさ

ああ 特にベニーな 彼女はすげぇイカしてるぜ

ギラギラのブーツに モヘアのスーツ

ほら 雑誌で見たやつさ

ベ ベ べ ベニーとジェッツだ!

おい ガキども 教えてやろうぜ 音楽を軽んじる奴らにも

まぁ多分 アイツらにはわかんねぇが それでもベニーは年齢の垣根だって消しちまうさ

生き残るのは俺たちだ さぁ共にいこうぜ

表に出て戦うんだ オヤジやお袋たちの世代と

誰が正しくて 誰が間違ってるか 明らかにするためにな

サビ繰り返し

和訳のチェックポイント(単語・文法の解説)

以下、和訳のチェックポイントをまとめておく。

Hey kids, shake it loose together

よう ガキども 一緒に踊ろうぜ

The spotlight's hitting something

スポットライトが何か照らしてるな

That's been known to change the weather

ありゃ天気だって変えちまうって噂だぜ

まず、歌詞の背景としてステージ上でスポットライトが綺羅びやかに何かを照らしている様(それを見ているファンの目線=語り手)を提示している。

スポットライトを逆さまにして空に向ける(華やかで近代的な)演出に心奪われている若者目線とも読める。

また、スポットライトがステージ上のバンドを照らしており、彼らは天気さえも変えることができる(=まさに神を崇めるが如くファンが熱狂している)バンドであるとも読める。

We'll kill the fatted calf tonight, so stick around

俺たちは今夜 盛大に祝うのさ まさに”太った子牛を殺す”ってやつだな

だから その辺で待ってろよ

You're gonna hear electric music

イカしたエレクトリック・ミュージックが聞こえてくる

Solid walls of sound

完璧な"ウォール・オブ・サウンド"だ

「kill the fatted calf」はイディオムで「太った子牛をを殺して」その肉で盛大なお祝いをするという意味(父親が帰ってきた息子のためにお祝い用のとっておきの牛を捌くという話)がある。

また、70年代の音楽業界が極めて派手で華やかなスタイルを肯定する一方、反対に犠牲となり「殺されている」ものも存在するという隠されたアイロニーとして読むこともできる。

「stick around」は「近くにいる、辺りをブラブラする」の意味。

「electric music(エレクトリック・ミュージック)」は、この曲自体の冒頭を指しながら、電子楽器を利用するというバンドの新奇さを強調している。

は、1960年代前半に開発された、音圧を上げるための音楽制作手法(またはそれによる音楽作品)である。

「solid(結束した)」なので、各パートが分離せずに力強くまとまった音の特徴が非常によく出ている(=完璧)という解釈した。

Say, Candy and Ronnie, have you seen them yet?

なぁ キャンディーとロニー アイツらを見たことあるか?

Ooh, but they're so spaced out, B-B-B-Bennie and the Jets

まぁ 相当イッちまってるヤツらだけどさ

ベ ベ ベ ベニーとジェッツ!

Oh but they're weird and they're wonderful

すげぇ変わってるけど 最高でさ

「Candy and Ronnie(キャンディーとロニー)」が誰かという点に関しては、答えがない。

が、薬物使用の示唆という解釈もある。

というのも次に来る

  • space out「(頭が)ボーッとする」

が、薬物の使用などでラリってる状態を指す単語でもあるからだ。

特徴的なサビの「B-B-B-Bennie and the Jets」という「ベベベ」の表現は、未来的なロボットのテーマを表現するような演出としてエルトン・ジョンがアイディアを出した。

Oh Bennie she's really keen

ああ 特にベニーな 彼女はすげぇイカしてるぜ

She's got electric boots, a mohair suit

ギラギラのブーツに モヘアのスーツ

You know I read it in a magazine, ohh-oh

ほら 雑誌で見たやつさ
B-B-B-Bennie and the Jets

ベ ベ べ ベニーとジェッツだ!

「ベニー」という女性キャラクターに関しては、エルトン・ジョンは「SFロックの女神」と表現している。

歌詞を書いたバーニー・トーピンは

Bennie And The Jets' was almost Orwellian - it was supposed to be futuristic. They were supposed to be a prototypical female rock 'n' roll band out of science fiction.

「ベニーとジェッツ」は、ほとんどオーウェル的で未来的な曲になるはずだった。彼らは、SFから飛び出してきた典型的な女性ロックンロールバンドになるはずだったんだよ。

構想を語っている

「electric boots, a mohair suit」は当時のエルトン・ジョンが好んで着ていたフェミニン系の衣装スタイルも彷彿させる。

「You know I read it in a magazine(ほら 雑誌で見たやつさ)」という一文からは、実際の音楽よりも歌い手の外見やスタイルに夢中になっている大衆へのアイロニーとも読める。

Hey kids, plug into the faithless

おい ガキども 教えてやろうぜ 音楽を軽んじる奴らにも
Maybe they're blinded

まぁ多分 アイツらにはわかんねぇが 

But Bennie makes them ageless

それでもベニーは年齢の垣根だって消しちまうさ

「plug into」は「繋がる、接続する」だがここでは「進出する」という意味合いで解釈した。

  • the 形容詞(~な人々)
  • faithless「不実な、信義のない」

ここでは自分たちが信奉する「(新しい)音楽」に対して不実な大人たちを「the faithless」と呼んでいると読める。

そいつらにも「ベニーとジェッツ」の音楽を聞かしてやるんだよ。

特にベニーは頭の固い(保守的で新しいものを嫌うような)大人でも年齢の垣根を超えて楽しめちまう(=それくらい最高)ということ。

We shall survive, let us take ourselves along

生き残るのは俺たちだ さぁ共にいこうぜ

Where we fight our parents out in the streets

表に出て戦うんだ オヤジやお袋たちの世代と

To find who's right and who's wrong

誰が正しくて 誰が間違ってるか 明らかにするためにな

60年代~70年代は特に、子どもの親に対する闘争(カウンターカルチャー)が多く乱立した時代である。

麻薬や自由恋愛だけでなく、ロックを代表とする音楽など。

若い世代と昔の世代の対立を表現しながら、自身に満ちた若者世代の声高な闘争宣言といえる。

また「out in the streets」には、当時のベトナム戦争のような諸問題に対して通りに出て抗議する血気盛んな若者の姿を反映したものとも読める。

和訳した感想

ということで今回は、エルトン・ジョンの

  • ベニーとジェッツ(Bennie And The Jets)

を和訳しました。

曲の中に架空のバンドが出てくるという構成は、同じくアメリカでヒットした「クロコダイル・ロック」と同じですね。

歌詞は最初から最後まで、子ども(新しい世代)の目線から今の音楽を肯定的に語られたものになります。

が、どこか当時の音楽業界に対する皮肉めいた示唆を読み取れるのが、面白い点かも知れません。

作詞者であるバーニー・トーピン自身も「1970年代の音楽業界に対する風刺」と語っています。

でも、語り手をあえて逆の立場の人間にして彼自身の本意は曖昧化するんですよね。

バーニー・トーピンは「Daniel(ダニエル)」という曲でも同じような手法を使っていて(=ベトナム戦争から帰ってきた兄をキラキラした瞳で見つめる弟目線の曲だが、その裏にダニエル本人の疲弊や自嘲を仄めかしている)控えめかつ多角的というか、解釈の幅を広げるのがうまいんですよね。

Hey kids, plug into the faithless

おい ガキども 教えてやろうぜ 音楽を軽んじる奴らにも
Maybe they're blinded

まぁ多分 アイツらにはわかんねぇが 

という表現も文字通りに解釈できるんですが、ある意味で目の前の派手で華やかなものに心奪われて熱狂している語り手自身が、ある意味「盲目的」に対象を崇拝しているようにも読めます。

そもそもオーウェル的な未来はディストピアですからね。

また、バーニー・トーピンはドイツの写真家ヘルムート・ニュートンの作品にもインスピレーションを受けて、未来的なアンドロイドとしての女性ロックンロールバンドというアイディアを温めていたようです。

※参考:genius.com / soungfacts.com