今回は、Avicii(アヴィーチー)の
- Wake Me Up(ウェイク・ミー・アップ)
という曲を和訳します。
タイトルの意味は「起こしてくれ」という感じです。
夢に生きて現実は直視せず、目を閉じていたい(=若いまま生きていきたい)という歌い手の思いと、どこかそれに反するような気持ちがうまく表現されている歌詞となります。
この曲の主人公は、目を閉じていたいのか、それとも目を開けたいのか。
Avicii(アヴィーチー)の代表曲。
印象的なメロディーなので、一度は聞いたことがある人も多いはずです。
また、実際に和訳してみて「思ったより深いな」と感じるものがありました。
Avicii(アヴィーチー)とは?
Avicii(アヴィーチー)は、スウェーデン出身の音楽プロデューサー・DJ。
Aviciiというアーティスト名は、サンスクリット語で「無間地獄」を意味するavīciに由来する。
母親は女優のアンキ・リデン。
18歳から曲を書きリミックスを手掛けるなど本格的に音楽活動を開始し、ブログにて楽曲を発表していく。
2013年6月にデビューアルバム「True」をリリース。
先行シングル「Wake Me Up」は、瞬く間に全英で1位を獲得した。
過度な飲酒で健康面での不安を抱えており、2016年にはDJ活動の引退を宣言する。
2018年4月20日、滞在していたオマーンのマスカットにて死去。
自殺だったことを示唆する遺族の声明によると
あまりにも完璧主義者であることから、世界中を旅するなかで心の中に平和を見つけることができずに、極度のストレスを抱えていました。(中略)物事の意味、人生、幸せについて考えることと闘っていました。しかしこれ以上続けることはできなかったのです。平和を見つけたかったのです。
享年28歳という若さだった。
Wake Me Up(ウェイク・ミー・アップ)という曲について
Wake Me Up(ウェイク・ミー・アップ)は、Avicii(アヴィーチー)の2013年デビューアルバム「True」の1曲目に収録されている。
リードシングルとしてもリリースされ、世界30カ国以上の国で1位を記録するメガヒットとなった。
作詞・ボーカルとして参加したアロー・ブラックの知名度も押し上げることとなった曲。
曲調としては、EDM、ソウル、カントリーミュージックの要素をブレンドしているといわれる。
また公式のMVは、20億回以上の再生回数を記録している。
Wake Me Up(ウェイク・ミー・アップ)の歌詞
Feeling my way through the darkness
Guided by a beating heart
I can't tell where the journey will end
But I know where to start
They tell me I'm too young to understand
They say I'm caught up in a dream
Well life will pass me by if I don't open up my eyes
Well that's fine by meSo wake me up when it's all over
When I'm wiser and I'm older
All this time I was finding myself
And I didn't know I was lostSo wake me up when it's all over
When I'm wiser and I'm older
All this time I was finding myself
And I didn't know I was lostI tried carrying the weight of the world
But I only have two hands
I hope I get the chance to travel the world
And I don't have any plans
I wish that I could stay forever this young
Not afraid to close my eyes
Life's a game made for everyone
And love is a prizeSo wake me up when it's all over
When I'm wiser and I'm older
All this time I was finding myself
And I didn't know I was lostSo wake me up when it's all over
When I'm wiser and I'm older
All this time I was finding myself
And I didn't know I was lostI didn't know I was lost
I didn't know I was lost
I didn't know I was lost
I didn't know I was lost
Wake Me Up(ウェイク・ミー・アップ)の歌詞和訳
手探りで進んでいる 暗闇の中を
心臓の鼓動に導かれて
わからない この旅がいつ終わりを迎えるか
でも どっから始めればいいのかはわかってる
あいつらは言う 俺には若すぎて理解できないって
夢に取り憑かれてる そう言うんだ
目を開けなければ 人生は過ぎ去っていく
それでも俺は構わない
*
だから起こしてくれよ すべてが終わったら
俺がもっと賢く 歳を重ねた時に
ずっと自分を探してきた
迷ってるなんて 気づきもせずに
*
サビ繰り返し
*
世界の重さを背負おうとしたけど
俺には二つしか手がなくて
願ってんだ 世界を旅するチャンスを
でも 計画は何一つなくて
ずっと若いままでいられたらいいのに
目を閉じるのは怖くない
人生はあらゆる人のために作られたゲームで
愛は その褒美なんだ
*
サビ繰り返し
*
迷ってるなんて 気づきもせずに
迷ってるなんて 気づきもせずに
迷ってるなんて 気づきもせずに
気づいていなかったんだ…
和訳のチェックポイント(文法・単語など)
以下、和訳のチェックポイントをまとめておく。
Feeling my way through the darkness
手探りで進んでいる 暗闇の中を
Guided by a beating heart
心臓の鼓動に導かれて
I can't tell where the journey will end
わからねぇ この旅がいつ終わりを迎えるか
But I know where to start
でも どっから始めればいいのかはわかってんだ
単語は
- feel one's way「手探りで進む」
- tell「わかる」
- where to「どこで~すべき」
冒頭は「~ing(している)」「~ed(される)」で分詞構文(主語は「I」)となっている。
「I can't tell」の「tell」は「伝える」という意味ではなく「わかる」という意。
自分の心(a beating heart)を頼りにして、先のわからない道を歩んでいく若者の姿を描写している。
They tell me I'm too young to understand
あいつらは言う 俺には若すぎて理解できないって
They say I'm caught up in a dream
夢に取り憑かれてる そう言うんだ
Well life will pass me by if I don't open up my eyes
目を開けなければ 人生は過ぎ去っていく
Well that's fine by me
それでも俺は構わないさ
単語は
- too … to~「あまりに…で~できない」
- pass by「通り過ぎる」
- fine by me「かまわない」
ここでの「they」は不特定多数の他者を指す。
周りの大人達に、若くて何もわからないと軽視され、現実を見ろ(夢を見て目を閉じている状態じゃダメだ)と説かれる。
でも俺は、そんな現実的な大人の生き方をするくらいなら、ずっと目を閉じて夢を見ていたいということ。
So wake me up when it's all over
だから起こしてくれよ すべてが終わったら
When I'm wiser and I'm older
俺がもっと賢く 歳を重ねた時に
All this time I was finding myself
ずっと自分を探してきた
And I didn't know I was lost
迷ってるなんて 気づきもせずに
単語は
- over「終わる」
- 形容詞+er(比較級)
- all this time「今まで」
できる限り長く夢を見ていたい(=若いまま夢を生きていたい、現実に絶望したくない)という意。
I tried carrying the weight of the world
世界の重さを背負おうとしたけど
But I only have two hands
俺には二つしか手がなくて
I hope I get the chance to travel the world
願ってんだ 世界を旅するチャンスを
And I don't have any plans
でも 計画は何一つなくて
「tried~ing」は過去形で「~してみた」という試みを表す。
が、現在形に移行して自分にはその力がなかった(=試みは挫折した)ことを表す。
「世界を(文字通り)肩に背負う」というのはギリシャ神話のタイタンに与えられた罰でもある。
耐えられないほど大人たちの期待などを一度は背負おうとした(そして挫折した)ことがあるとも読める。
そして広大な世界を旅しようと考えても、それを実現できる具体的な計画や見込みもない。
若さゆえの力不足、至らなさ、歯がゆさのようなものを自身もまた自覚していることがわかる文章。
I wish that I could stay forever this young
ずっと若いままでいられたらいいのに
Not afraid to close my eyes
目を閉じるのは怖くない
Life's a game made for everyone
人生はあらゆる人のために作られたゲームで
And love is a prize
愛は その褒美なんだ
「I wish that I could stay forever this young」は仮定法(=現実には実現できない)
人生とは単なるゲームで、愛もその褒賞でしかない。
だから自分は目を瞑り、このまま暗闇の中で夢を見続けて、人生が通り過ぎていっても良い。
だがサビの最後のフレーズである
I didn't know I was lost
迷ってるなんて気づきもせずに
が、繰り返されて曲が終わっていること点が興味深い。
つまり「気づいてもいなかった(自分が迷っているなんて思いもしなかった)」状態から、少し年を取り「気づいてもいなかった(というこれまでの自分の現状を客観的に自覚できるようになった=気づき始めてしまった)」という仄めかしともいえる。
目覚めたくない、でも起こしてほしい。
モラトリアムの狭間にいる若者の心境や精神的な戸惑いを、簡潔ながら上手く表現している歌詞。
和訳した感想
ということで今回は、Avicii(アヴィーチー)の
- Wake Me Up(ウェイク・ミー・アップ)
を和訳しました。
とてもシンプルな歌詞ではありますが、若者の葛藤や迷いのようなものが上手く表現されている内容だと感じました。
またタイトルが結局
- wake me up(起こしてくれ)
なのがすごくいいですね。
夢から覚めたくない、いっそ死ぬまでコレでいい。
そこまで言っているのに、最終的には「起こしてくれ」という気持ちを完全には捨て去れない。
素直になれない若者のSOSにも感じます。
そして「暗闇を手探りで進んでいる」など、自分の状況が苦しいことを客観的に自覚もしています。
若さの真っ只中というよりも、どこか変遷していく自分自身へのいらだちや戸惑いも表現されていますよね。
すごくアンビバレンスな若者の心境がうまく表現されている歌詞だなと思いました。