今回は、カーペンターズ(Carpenters)の
- イエスタデイ・ワンス・モア(Yesterday Once More)
の歌詞を和訳したいと思います。
タイトルを直訳すると「昨日もう一度」ですが、この「yesterday」は広く「過去」をさすという解釈も多くあります。
昔聞いていた曲が流れると、当時の気持ちが蘇ってくる。
ノスタルジックな気持ちを歌った、誰もが知る洋楽名曲中の名曲ではないでしょうか。
一見、簡単そうな英語の曲。
ですが、意外と和訳しにくい曲なのではないかなと感じるものもありました。
カーペンターズ(Carpenters)とは?
カーペンターズ(Carpenters)とは、アメリカ出身の兄妹ポップ・デュオである。
兄のリチャード・カーペンターが楽器を担当し、ボーカルを妹のカレン・カーペンターが務めた。
ロック全盛の1970年代に大きな成功を収め、アルバム・シングルの総売上枚数は1億枚を上回るといわれている。
1983年のカレンの死により活動を終えた。
(彼女の死因が拒食症に起因する心停止だったことから、摂食障害の危険性が広く認知されるようになったともいわれえれている)
代表曲として「遥かなる影」「イエスタデイ・ワンス・モア」「青春の輝き」など。
イエスタデイ・ワンス・モア(Yesterday Once More)という曲
イエスタデイ・ワンス・モア(Yesterday Once More)は、1973年にカーペンターズが発表したシングル曲。
作詞作曲はリチャード・カーペンターとジョン・ベティス。
1972年のアルバム『ア・ソング・フォー・ユー』に収録されている。
アメリカでは、1973年7月にBillboard Hot 100で2位。
また、日本とイギリスにおけるカーペンターズ最大のヒット曲でもある。日本のセールスは100万枚以上、オリコン洋楽チャートでは26週連続1位を記録した大ヒット曲。
イエスタデイ・ワンス・モア(Yesterday Once More)の歌詞
When I was young I'd listen to the radio
Waitin' for my favorite songs
When they played I'd sing along, it made me smileThose were such happy times and not so long ago
How I wondered where they'd gone
But they're back again just like a long lost friend
All the songs I loved so wellEvery sha-la-la-la
Every wo-o-wo-o, still shines
Every shing-a-ling-a-ling, that they're startin' to sing's, so fineWhen they get to the part
Where he's breakin' her heart
It can really make me cry, just like before
It's yesterday once moreLookin' back on how it was in years gone by
And the good times that I had
Makes today seem rather sad, so much has changed.It was songs of love that I would sing to then
And I'd memorize each word
Those old melodies still sound so good to me
As they melt the years awayEvery sha-la-la-la
Every wo-o-wo-o, still shines
Every shing-a-ling-a-ling, that they're startin' to sing's so fineAll my best memories come back clearly to me
Some can even make me cry, just like before
It's yesterday once moreEvery sha-la-la-la
Every wo-o-wo-o, still shines
Every shing-a-ling-a-ling, that they're startin' to sing's so fineEvery sha-la-la-la
Every wo-o-wo-o, still shines
Every shing-a-ling-a-ling
イエスタデイ・ワンス・モア(Yesterday Once More)の歌詞和訳
若いころ よくラジオを聞いていて
お気に入りの曲が流れるのを待っていた
演奏が始まると 私は歌いだして 笑顔になった
*
そういった幸せな時間は それほど昔じゃないのに
どこに行ってしまったのって すごく不思議だった
でも 再び戻ってきた ずっと会えなかった友達みたいに
わたしが愛してやまなかった 曲のすべてが
*
すべてが シャララララ
すべてが ウォウォウォウ
まだ輝いている
シンガリンガリン と歌いだして
すごく素敵
*
あのパートにさしかかり
彼が彼女を傷つける部分になると
本気で泣いてしまう 昔のように
過ぎ去ったあの日が もう一度
*
過ぎ去りし日々がどんなものだったか
良かった時間ばかりを振り返ると
今日がより悲しいものに思えてくる
たくさんのことが変わってしまったから
*
ラブソングだった あのとき合わせて歌ったのは
どの言葉も覚えている
昔懐かしいメロディは まだ耳心地よい
あの音色が時を溶かしてくれるから
*
すべてが シャララララ
すべてが ウォウォウォウ
まだ輝いている
シンガリンガリン と歌いだして
すごく素敵
*
最高の思い出がすべて鮮明によみがえる
中には泣いてしまうものもある 以前のように
過ぎ去ったあの日が もう一度
*
すべてが シャララララ
すべてが ウォウウォウ
まだ輝いている
シンガリンガリン と歌いだして
すごく素敵
すべてが シャララララ
すべてが ウォウウォウ
シンガリンガリン…
和訳のチェックポイント(単語・文法の解説)
以下、和訳のチェックポイントをまとめておく。
まず
When I was young I'd listen to the radio
若いころ よくラジオを聞いていて
Waitin' for my favorite songs
お気に入りの曲が流れるのを待っていた
When they played I'd sing along, it made me smile
演奏が始まると 私は歌いだして 笑顔になった
「I'd listen」の「'd」は「would」で「よく~したものだった」という慣習を表す。
「sing along」は「一緒になって歌う」の意。
「it made me smile」は「make 人 V'(人にV'させる)」という使役動詞で「笑わせる(=自分の意思とは関係なく思わず笑顔になってしまうという状態)」を表す。
Those were such happy times and not so long ago
そういった幸せな時間は それほど昔じゃないのに
How I wondered where they'd gone
どこに行ってしまったのって すごく不思議だった
But they're back again just like a long lost friend
でも 再び戻ってきた ずっと会えなかった友達みたいに
All the songs I loved so well
わたしが愛してやまなかった 曲のすべてが
「How I wondered」の「How」は感嘆を表してる(wonderの強調)
「All the songs I loved so well」は関係代名詞の省略で「All the songs (that) I loved so well」と考えるとわかりやすいかもしれない。
Every sha-la-la-la
すべてが シャララララ
Every wo-o-wo-o, still shines
すべてが ウォウウォウ
まだ輝いている
Every shing-a-ling-a-ling, that they're startin' to sing's, so fine
シンガリンガリン と歌いだして
すごく素敵
ここでの
- sha-la-la-la
- wo-o-wo-o
- shing-a-ling-a-ling
は日本語でいうオトマノペのようなものと捉えて、そのまま和訳した。
またこちらのレポートによると、これらの表現は
- 1950後半~1960年前半代のヒットソング
にみられるものであるという指摘があり、具体て曲名の言及がある。
これによると「シャララララ」の部分に関しては
- The Beatles ‘Baby It's You’
- (オリジナルはThe Shirelles)
にみられるものだ、という作曲者本人の言及がある。
※曲の冒頭から「シャララララ~シャララララ~♪」という掛け声で始まっている。
「ウォウウォウ」に関しては、多くの曲に見られるフレーズであるという答えだった。
「シンガリンガリン」という部分に関しては
- The Chords ‘Sh-Boom’
に依拠してると述べている。
1970年初期にこの曲(イエスタデイ・ワンス・モア)を制作したリチャード・カーペンターズ(1946年生まれ~)も、まさにこれらの時代(1950年代~1960年代初期)の曲を聞いて育った世代といえる。
まとめると、これらのフレーズは単なるオトマノペというだけでなく
- 当時の音楽を想起させる役割
を果たし、この曲のテーマがある種のノスタルジアであることを強調してるといえる。
文法としては「still shines」の「shines」は動詞で「輝いている」である。
続く
- Every shing-a-ling-a-ling, that they're startin' to sing's, so fine
の部分は「sing's」を「sing is」と考えて訳した。
When they get to the part
あのパートにさしかかり
Where he's breakin' her heart
彼が彼女を傷つける部分になると
It can really make me cry, just like before
本気で泣いてしまう 昔のように
It's yesterday once more
過ぎ去ったあの日が もう一度
「they get to the part」は曲の演奏が、あるパートにさしかかるという意。
「the part」を詳しく説明するように修飾してるのが「Where he's breakin' her heart」で、そのパートの中で或る男性が女性の心を傷つける(=失恋か浮気か?)シーンがあるということ。
そのパートが「make me cry(私を泣かせる)」使役動詞(~させる)となり、思わず泣いてしまう。
Lookin' back on how it was in years gone by
過ぎ去りし日々がどんなものだったか
And the good times that I had
良かった時間ばかりを振り返ると
Makes today seem rather sad, so much has changed.
今日がより悲しいものに思えてくる
たくさんのことが変わってしまったから
ここでは
- Lookin' back on「~について振り返る」
が主語の核である。
続く「on(~について)」の内容が以下二つ
- how it was (in years) gone by ①
- and
- the good times (that I had) ②
つまり①と②を振り返る(Lookin' back on~)ということが(=ここまでがS)
- Makes today seem rather sad
動詞は「makes」で使役動詞として使われているので 「seem」は原型になる。
直訳すると「今日をより悲しいものに思わせる」という感じだろう。
※この部分は「the good times that I had」を「makes」の主語としている誤訳が流布してるように思われた。この場合「times」が複数形なので「makes」ではなく「make」になる。
It was songs of love that I would sing to then
ラブソングだった あのとき合わせて歌ったのは
And I'd memorize each word
どの言葉も覚えている
下線部は「it is(was)~that…」で、後ろの文章が欠けているため強調構文である。
元の文は
I would sing to songs of love then
であると考えるのが妥当。
「to then」が一つの塊になっているのではなく「sing to」で
- ~に合わせて歌う
という意味。
「愛の歌(ラブソング)」に合わせて一緒に自分を歌っていた、という様子を表してる。
更にここでは「songs of love」を強調するために「it is(was)~that…」を用いて
I would sing to songs of love then(元の文)
↓
It was songs of love that I would sing to then
と前に出しているということ。
「ラブソングだったのよ~!あのとき合わせて歌ってたのは」という感じだ。
※この部分を「to then」と捉えて、誤訳だとみなし「to them」に改変してる歌詞も見られたが文脈的におかしい。また、Google翻訳などで「to then(その時まで)」と表示されるが「up to then(その時まで)」なら未だしも一般的な使い方として不自然と判断した。
Those old melodies still sound so good to me
昔懐かしいメロディは まだ耳心地よい
As they melt the years away
あの音色が時を溶かしてくれるから
「melt the years away」は、過去(=写真のように動かずに死んでしまったような不動の記憶)が音楽の調べによって溶けていく(=今と同じように活き活きと動き始める)という印象で和訳した。
最後に昔と変わっていない自分の心情、曲に対する想いから
-
It's yesterday once more
というフレーズに結ばれる。
この部分の解釈・和訳は、人によってかなり違うと思われる。
(また、どれが正解とも言えない)
色々と考えたが一番無難(?)に「yesterday」を大きく「過去」と考えて、昔に戻ったみたいだという歌い手の心情を表すフレーズとした。
和訳した感想
ということで今回は、カーペンターズ(Carpenters)の
- イエスタデイ・ワンス・モア(Yesterday Once More)
の歌詞を和訳しました。
私の世代だと、子ども時代に見ていたTBS「学校へ行こう」の「未成年の主張」の曲という印象が強いと思います(笑)
屋上から全校生徒に向かって叫んで告白成功(?)とかになると、最後スローモーションになってV6が走っていくというエンディングなんですよね。
そういう思い出も込みで「懐かしいな~~」という気持ちが、より一層掻き立てられる曲でした。
この曲は一見、すごく簡単な歌詞のように思われます。
うっかり中学英語の指導などで選んでしまう英語教師もいるかもしれませんね。
が、途中で何度か言及したように
- 誤読しやすい英文
だと思います。
これは、中学生には厳しいでしょう
(中学英語の範囲で使うなら「Sing」などが良い気がします)
特に「Lookin' back on how it was~」部分のSVを正しく読めてない人が多い気がしますので、むしろ高校生などに説いてみても良いレベルかもしれません。
「It was songs of love that I would sing to then」という強調構文もあるので、大学受験生にもおすすめかも。
何より曲のメインである
- It's yesterday once more
というフレーズの和訳が、すごく難しいなと感じました。
この部分に関しては、解釈の幅がどうしても広くなるので答えがない分、和訳しにくいのではないでしょうか。
※この点を含めて今回の和訳では、こちらのレポートを参考にさせていただきました。
ただ全体のテーマというか内容は、非常にシンプルです。
若い頃、狂ったように聞いていた音楽を大人になってから聞くと、すごく懐かしくて胸にこみあげてくるものがある。
この心情、共感できる大人は山のようにいるのではないでしょうか。
音楽愛に溢れてる曲、それでいて心があたたかくなるようなカーペンターズの名曲だなと改めて感じました。